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正社員の雇用関係は、パートタイマーやアルバイトの雇用関係とは概念的に異なる。
後者が単純な特定の労働と特定の報酬の取引契約であるのに対して、前者では労働給付と報酬の関係ははるかに曖味なものである。
これが、企業内における一種の身分関係の内実である。
これは一般的には安定した雇用、高い賃金水準、高い期待度などとともに、企業業績への共同責任や会社の都合による異動などに従わなければならないことを意味する。
法律上、正社員と非正社員は区別されていないにもかかわらず、現実には明らかに区別が存在している。
一般にほ正社員にはそうでない人よりも困難な仕事をこなすことが求められており、それだけ能力開発も進む。
正社員の雇用関係は、個人の立場からして、こうした職業能力向上や、安定した雇用、ある程度の賃金水準ともあいまって、全体としては望ましいものである。
企業にとっても、こうした人材がいなければ自らが成り立たない。
しかし問題がないわけではない。
生き方という観点からすれば、現在私たちには、窮屈な二者択一システム、つまり会社の都合に翻弄される正社員労働者に専念するか、不安定で低い処遇の非正規労働者に甘んじるかという二つの通しか用意されていない。
雇用形態の多様化といわれながら、その内実は非正規労働者の拡大と分化になっている。
こうした「多様化」は社会的に果たして望ましいのであろうか。
非正規労働者の分化ではなく、正規労働者の分化(多様な正社員)こそが必要なのではないだろうか。
企業は、正社員の高コストを問題としているが、それは画一的な正社員管理が問題なのであって、正社員をなくすことで解決する問題ではない。
もし正社員のコストが高すぎるというのであれば、多様な正社員化によって引き下げることは可能かもしれない。
もちろんモラールを下げないことが必要だ。
二〇〇一年に松下電器産業やシャープが相次いで新たに「地域限定社員」を導入した。
これは直接的には企業による人件費削減の施策である。
転勤がないかわりに賃金水準を一~二割下げるというものである。
こうした施策は本書の観点からいえば、多様な正社員としての重要な一歩ともいえる。
いたずらに正社員を減らし、パートやアルバイトなどに頼る安易な企業のやり方は、企業そのものの体力を弱めてしまうのではなかろうか。
多様な雇用形態ではなく、多様な正社員こそが、私たちが求めているものなのである。
ちなみに、労働省『雇用管理調査』(一九九九年)によれば、人事管理諸制度の導入状況は、「自己申告制度」一四・〇%、「複線型人事管理制度」九・七%、「限定勤務地制度」六・九%、「社内人材公募制度」三・二%、五〇〇〇人以上規模では「自己申告制度」七七・五%、「複線型人事管理制度」五三・四%、「社内人材公募制度」四三・三%、「限定勤務地制度」三〇・四%である。
「多様な正社員」を採用するときに最大の問題となるのは、複数の正社員間での公平感の維持と、昇進・昇格など人事管理の複雑化にともなうコストである。
しかし、人々が希望する形の正社員として意欲をもって働いてもらえれば、企業にとってもメリットは少なくないはずである。
(1)国勢調査についていえば,調査期間中に収入のある仕事をしている人を就業者と呼ふ雇用されている人(雇用者),役員,自営業主(個人経営の商店主・事業主・農業主,開業医・弁護士など),家族従業者(白営業主を手伝っている家族),家庭内職者(家庭内で賃仕事・内職をしている人)に分けられる。フリーランサーなどは自営業主に区分される。就業者の一部が雇用者(本当は,雇用主と区別するために被用者あるいは被雇用老と呼ぶほうが混乱が少ないが,統計用語にここでは従う)。(2)「雇用者」には「役員」を,「自営業主」には「家庭内職者」を含む。以下では,「自営業主」「家族従業者」「家庭内職者」を一括して「自営業者」と呼ぶ。調査期間中に開業した事業所数を1年あたりに換算して,前調査時点での事業所数で割ったもの。廃業率も開業率とほぼ同様の手続で算出。詳しくは,『中小企業自書』(2002)付注2Ml・「開業率・廃業率の計算方法」を参照。(4)『労働力調査』は読者にはなじみがあるかもしれない。毎月発表される失業率の根拠となるものである。だが,『労働力調査』は失業率を算定するためのものだけに質問項目がシソプルであり,就業者や失業者についての詳しい内容がわからない。それゆえに,従来は毎年2凡雇用状況が悪化した1999年から2001年までは8月にもおこなっていたのが『労働力調査特別調査』である。(5)労働法の好著として,菅野和夫(2002)。(6)例外は一部の高度専門職と60歳以上の労働者であり,これらの人々については上限は3年である。(7)現在,派遣期間が3年まで認められるのは,次の26の専門的業務である。①ソフトウェア開発,②機械設計,③放送機器等操作,⑥放送番組等操作,⑤事務用機器等操作,⑥通訳・翻訳・速記,⑦秘書,⑧ファイリング,⑨調査,⑳財務処理,⑪取引文書作成,⑫デモンストレーシ′ヨン,⑬添乗,⑭建築物清掃,⑮建築設備運転・点検・整備,⑲博覧会場などの案内・受付,駐車場管理,⑰研究開発,⑲事業の実施体制の企画・立案,⑲害籍等の制作・編集,⑳広告デザイソ,㊧インテリアコーディネーター,⑳アナウソサー,⑳OAイソストラクション,等に係る大道具・小道具。(8)この点については第5章で論じる。ずいぶん前から「ベンチャー」がもてはやされている。
ほとんどが失敗して、たまには成功するのが「ベンチャー」だから、バイタリティーのかたまりのような強い人ならば、「ベンチャー」に挑戦すべきだ。
しかし、そうでない人のほうがはるかに多い。
実際、独立開業する人は決して増えていない。
また、会社の都合だけで振り回される正社員では息昔しい。
とはいえ、大喝ともに契約社員や派遣社員といった非正社員では、生活の見通しが立たない。
仕事と家庭生活の両立日本人の仕事と生活についての意識に変化が起こっている。
NHK放送文化研究所が五年おきに実施している『現代日本人の意識構造』からこの変化をみたものが次ページの図表事志向」が大幅に減り、仕事にも余暇にも同じくらい力をいれる「仕事・余暇両立志向」が増えている。
また、「余暇志向」も増加している。
この傾向は男女を問わない。
男性では一九八〇年代前半まで半数を占めた「仕事志向」は一九九〇年代に入り全体の三割に急減した。
今では、仕事志向と余暇志向がほぼ同じ割合を占めている。
とくに女性では、余暇志向が四割を超え、仕事志向は二割にとどまる。
マスコミの論調からすれば、女性の仕事志向が高まってもよいはずだが、むしろこの間、仕事志向は大幅に低下していることがわかる。
非正社員のほうが満足度は高い図表2-2は、職場での満足度をDI(1)を基に正社員と非正社員で比較したものである。
これをみると、全体として非正社員のほうが満足度が高い。
ともに満足度が高いのは(正社員対非正社員は三八・七対五五・五)や「労働時間・休日数」(二五・八対四九・〇)、「賃金」(一・七対二一・四)、「評価・処遇」(九・八対一八・四)など、軒並み非正社員のほうが満足しているのであり、正社員の満足度のほうが大幅に高いのは「雇用の安定性」と「福利厚生」にとどまっている。
これは正社員よりも非正社員のほうが望ましいということを意味しているのであろうか。
いや、そうではあるまい。
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